有期契約社員の雇止め|労働契約法第19条の判断枠組み、無期転換ルールとの関係、及び採用時と更新時に会社が行うべきこと(使用者側)

「契約社員の更新が今回で3回目になるが、そろそろ契約を終了したい」「有期契約は3年を超えて更新すると正社員と同じになると聞いた」という御相談を受けることがあります。結論から申し上げますと、有期労働契約を期間の満了により終了させること(雇止め)は、契約の更新回数や通算期間が一定の年数に達したことによって一律に禁止されるものではありません。他方で、「3年以内であれば自由に雇止めができる」というものでもありません。雇止めの可否は、労働契約法第19条に基づき、当該契約が実質的に無期契約と異ならない状態にあるか、又は労働者が更新を期待することについて合理的な理由があるかという観点から、契約の更新の実態、業務の内容、会社の説明等を総合して判断されます。また、通算契約期間が5年を超えた場合には、労働契約法第18条により労働者に無期転換申込権が生じます。本記事では、使用者側の立場から、有期労働契約の期間の上限に関する正確な理解、雇止めの適法性の判断枠組み、無期転換ルールとの関係、及び採用時と更新時に会社が行うべきことを解説します。

雇止めを行った後に労働者から無効を主張された場合の対応は、関連記事「雇止めが違法無効であるとして損害賠償請求をされた場合」を、無期転換ルールの詳細は、関連記事「パートタイマーの正社員への転換問題とは」を御覧ください。

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有期労働契約の期間に関する正確な理解

1回の契約期間の上限は3年(労働基準法第14条第1項)

労働基準法第14条第1項は、期間の定めのある労働契約について、1回の契約期間の上限を原則として3年(高度の専門的知識等を有する労働者及び満60歳以上の労働者については5年)と定めています。これは、1回の契約で労働者を長期間拘束することを防ぐための規制であり、契約を更新して通算の雇用期間が3年を超えることを禁止するものではありません。「有期契約は3年を超えて更新してはならない」「3年を超えると正社員と同じになる」という理解は正確ではありません。

通算5年を超えると無期転換申込権が生じる(労働契約法第18条)

同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の通算契約期間が5年を超える労働者は、現に締結している有期労働契約の期間の満了日までの間に、期間の定めのない労働契約への転換を申し込むことができ、使用者はこの申込みを承諾したものとみなされます(労働契約法第18条第1項)。転換後の労働条件は、別段の定めがない限り、転換前の有期契約と同一(期間の定めを除きます。)です。無期転換は正社員への登用を意味するものではなく、パートタイマーであれば無期のパートタイマーとなります。契約と契約の間に一定の空白期間(原則6か月以上)がある場合には、それ以前の契約期間は通算されません(同条第2項)。

更新の上限を設ける場合の留意点

会社が更新回数又は通算期間に上限(例えば通算4年11か月)を設けること自体は禁止されていません。ただし、無期転換申込権の発生を回避することのみを目的として、それまで更新を重ねてきた労働者を通算5年の直前で雇止めすることは、労働契約法第19条の下で更新への合理的な期待が既に生じていると判断され、雇止めが無効とされるおそれがあります。上限を設ける場合には、採用の当初から契約書及び労働条件通知書に明示し、更新の都度確認することが必要です。令和6年4月1日以降は、労働基準法施行規則の改正により、有期労働契約の締結及び更新の際に、更新上限の有無及び内容を労働条件として明示することが義務付けられています。また、無期転換申込権が発生する契約の更新時には、無期転換を申し込むことができる旨及び転換後の労働条件を明示しなければなりません。

雇止めの適法性の判断枠組み(労働契約法第19条)

雇止め法理が適用される二つの場合

労働契約法第19条は、次のいずれかに該当する有期労働契約について、労働者が期間満了日までの間に更新の申込みをし、又は期間満了後遅滞なく締結の申込みをした場合において、使用者がこれを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないときは、従前と同一の労働条件で契約が更新されたものとみなすと定めています。第一は、過去に反復して更新された有期労働契約であって、その雇止めが期間の定めのない労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるものです(第1号)。第二は、労働者において契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるものです(第2号)。

合理的な期待の有無を判断する要素

更新への合理的な期待の有無は、業務の客観的内容(恒常的な業務か臨時的な業務か、正社員と同一の業務か)、契約上の地位の性格(更新を前提とする職種か)、当事者の主観的態様(採用時及び更新時の会社の説明、継続雇用を期待させる言動の有無)、更新の手続の実態(契約書の作成の有無、更新の都度の面談の有無、形式的に更新を繰り返していないか)、更新の回数及び通算期間、他の労働者の更新状況(同種の労働者が雇止めされた例があるか)等を総合して判断されます。裁判例には、正社員と業務内容に大きな相違がなく、更新の手続が形式的で、大半の有期契約労働者がそのまま継続して勤務しており、正社員登用への期待を抱かせる言動があった事案において、雇止めを解雇と同視し、無効としたものがあります。他方、臨時的な業務であることを採用時に明示し、更新の都度面談を行い、更新上限を明示していた事案では、合理的な期待が否定されています。

雇止めの理由の合理性と相当性

合理的な期待が認められる場合であっても、雇止めが直ちに無効となるわけではなく、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性があれば有効です。担当業務の終了や縮小、勤務成績や勤務態度の不良、経営上の必要性等が理由となりますが、経営上の必要性を理由とする場合には、整理解雇に準じて、人員削減の必要性、雇止め回避の努力、人選の合理性、及び手続の相当性が問われます。勤務成績や勤務態度を理由とする場合には、正社員の解雇の場合と同様に、注意及び指導の記録が必要です。

雇止めの手続

雇止めの予告

有期労働契約が3回以上更新されている場合、又は1年を超えて継続して雇用されている労働者について契約を更新しない場合には、あらかじめ更新しない旨を明示している場合を除き、少なくとも契約期間の満了日の30日前までに、その予告をしなければなりません(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(厚生労働省告示)第1条)。予告は書面で行い、控えを保管します。

雇止めの理由の明示

雇止めの予告をした場合に労働者が雇止めの理由について証明書を請求したときは、遅滞なく交付しなければなりません(同基準第2条)。証明書に記載する理由は、契約期間の満了とは別の、具体的な理由(担当業務の終了、勤務成績の不良等)でなければなりません。ここに記載した理由が、後の紛争における会社の主張の基礎となりますので、記載の前に事実関係と証拠を確認します。

契約期間の途中での解雇との区別

契約期間の満了を待たずに契約を終了させることは雇止めではなく解雇であり、やむを得ない事由がある場合でなければ認められません(労働契約法第17条第1項)。この要件は無期契約の解雇よりも厳格です。契約期間の途中で人員を削減する必要が生じた場合には、解雇ではなく、合意による契約の終了を検討します。

採用時と更新時に会社が行うべきこと

採用時

第一に、契約期間、更新の有無、更新の判断基準(業務量、勤務成績、勤務態度、能力、会社の経営状況等)、及び更新上限の有無と内容を、労働条件通知書及び雇用契約書に明示します(労働基準法第15条、同法施行規則第5条)。第二に、有期契約とする理由(特定の業務の期間、繁忙期の対応等)を明確にし、業務内容を正社員と区別します。第三に、正社員登用制度がある場合には、その要件(試験、勤続年数等)と、更新を重ねても自動的に登用されるものではないことを説明し、説明した内容を記録します。求人広告における「正社員登用あり」の表示と実態とが乖離しないよう注意します。

更新時

第一に、契約期間の満了前に必ず面談を行い、更新の可否を判断基準に照らして検討したうえで、更新する場合には新たな契約書を作成し、署名を得ます。更新の手続を行わないまま勤務を継続させることは、実質的に無期契約と異ならないとの評価につながります。第二に、更新の都度、更新上限の有無と残りの更新回数を確認し、記録します。第三に、勤務成績や勤務態度に問題がある場合には、更新の際にその旨を伝え、改善を求め、記録を残します。問題を指摘しないまま更新を重ね、突然雇止めをすることは、相当性を欠くと判断されやすくなります。第四に、無期転換申込権が発生する更新の際には、その旨と転換後の労働条件を明示します。

労働条件の設計

正社員と有期契約社員との間の待遇の相違は、業務の内容、責任の程度、配置の変更の範囲その他の事情に照らして不合理なものであってはなりません(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第8条)。有期契約であることを理由に待遇差を設けるのではなく、職務の内容と責任の相違を明確にしたうえで、それに対応する待遇を設計します。

雇止めではなく合意による終了を選ぶ場合

更新への合理的な期待が既に生じていると考えられる場合や、雇止めの理由の説明が難しい場合には、雇止めを強行するのではなく、退職の条件(退職金の上乗せ、転職の支援、退職日等)を提示して合意による契約の終了を図ることが、紛争を避ける現実的な方法です。合意による終了の進め方と限界は、正社員に対する退職勧奨と同様であり、労働者が終了に応じない意思を明確に示した後に繰り返し働きかけることは、違法な退職の強要と評価されるおそれがあります。退職勧奨の進め方については、関連記事「問題社員への対応|解雇の要件と、適法な退職勧奨の進め方(使用者側)」を御覧ください。

弁護士に相談する時期と、費用の考え方

有期契約社員の雇止めを検討する場合には、契約書及び更新の手続の実態、業務の内容、更新回数と通算期間、これまでの会社の説明等を踏まえて、労働契約法第19条の適用の有無と雇止めの理由の合理性を事前に検討する必要があります。雇止めの予告を行う前に御相談いただければ、雇止めが可能か、合意による終了を選ぶべきか、必要な記録と手続は何かを整理することができます。当事務所では、使用者側の立場から、雇用契約書及び更新手続の整備、更新上限と無期転換への対応の制度設計、個別の雇止めの可否の判断と手続の助言、退職勧奨への同席又は助言、並びに雇止めを争われた場合の労働審判及び訴訟への対応を取り扱っています。費用は、御相談の内容と関与の範囲に応じて事前に御説明します。

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よくあるご質問

有期契約は3年を超えて更新すると正社員と同じになるのですか。

いいえ。労働基準法第14条第1項の3年は1回の契約期間の上限であり、通算期間の上限ではありません。雇止めの可否は、通算期間のみではなく、労働契約法第19条に基づき、更新の実態や更新への期待の合理性を総合して判断されます。通算5年を超えると無期転換申込権が生じますが、これも正社員への登用ではありません。

通算5年になる直前に雇止めをすれば、無期転換を避けられますか。

無期転換申込権の発生を避けることのみを目的とする雇止めは、それまで更新を重ねてきたことにより更新への合理的な期待が生じていると判断され、無効とされるおそれがあります。更新上限を設ける場合には、採用の当初から明示し、更新の都度確認しておくことが必要です。

更新の都度契約書を作り直していません。問題がありますか。

更新の手続を行わないまま勤務を継続させていると、契約が実質的に無期契約と異ならないと評価され、雇止めが解雇と同視されるおそれがあります。直ちに、契約期間の満了前に面談を行い、契約書を作成する運用に改めてください。

業務の縮小を理由に雇止めをすることはできますか。

できますが、更新への合理的な期待が認められる労働者については、整理解雇に準じて、人員削減の必要性、雇止め回避の努力、人選の合理性及び手続の相当性が問われます。有期契約社員から先に削減すること自体は不合理ではありませんが、その理由を説明できるようにしておく必要があります。

雇止めの予告はいつまでに、どのように行いますか。

3回以上更新した労働者又は1年を超えて継続雇用している労働者を雇止めする場合には、あらかじめ更新しない旨を明示している場合を除き、契約期間の満了日の30日前までに予告します。書面で行い、労働者から請求があれば、雇止めの具体的な理由を記載した証明書を交付します。

まとめ

有期契約社員の雇止めは、通算期間が一定の年数に達したことにより一律に禁止されるものでも、一定の年数以内であれば自由に行えるものでもありません。労働基準法第14条第1項の3年は1回の契約期間の上限であり、労働契約法第18条の無期転換申込権は通算5年を超えた場合に生じ、雇止めの可否は労働契約法第19条に基づき更新の実態と期待の合理性から判断されます。会社は、採用時に契約期間、更新の判断基準及び更新上限を明示し、更新の都度面談と契約書の作成を行い、問題があれば指摘して記録を残し、雇止めをする場合には30日前までに予告して理由を説明できるよう準備する必要があります。対応に迷われた場合には、雇止めの予告を行う前に、使用者側の労働問題を取り扱う弁護士に御相談ください。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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