外国人従業員の解雇・退職|日本人と同一の法規制と、在留資格に関する固有の留意点(使用者側)

「外国人の従業員を解雇したいが、日本人と違う手続が必要なのか」「在留資格があるうちは解雇できないのか」という御相談を受けることがあります。結論から申し上げますと、外国人従業員の解雇には、日本人従業員の解雇と同一の法規制が適用されます。労働契約法第16条の解雇権濫用法理、労働基準法第20条の解雇予告、同法第19条の解雇制限、有期契約労働者についての労働契約法第17条及び第19条は、いずれも国籍を問わず及びます。外国人であることを理由に解雇の要件が緩和されることはなく、逆に、外国人であることを理由に解雇することは労働基準法第3条に反します。他方で、在留資格の期間や範囲との関係で、外国人従業員に固有の留意点がいくつかあります。

本記事では、使用者側の立場から、外国人従業員の解雇に適用される規制、在留資格に関する固有の問題、退職勧奨と合意退職の進め方、及び退職に伴う会社の手続について解説します。解雇の要件全般については、関連記事「問題社員への対応|解雇の要件と、適法な退職勧奨の進め方(使用者側)」を御覧ください。

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外国人従業員の解雇に適用される法規制

解雇権濫用法理(労働契約法第16条)

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には無効です。勤務成績の不良、勤怠不良、協調性の欠如、業務命令違反等を理由とする解雇については、日本人従業員と同様に、会社が繰り返し注意及び指導を行い、改善の機会を与え、配置転換等の解雇回避の手段を検討したうえで、なお雇用の継続が困難であることが求められます。指導の記録がないまま行った解雇は、無効と判断されるおそれが高いです。

言語や文化の相違を理由とする解雇

日本語の能力や文化の相違を理由として直ちに解雇することはできません。採用時に求めた日本語の水準や職務の内容が明確であり、その水準に達していないことが業務に具体的な支障を生じさせており、会社が指導や配置の工夫を行ってもなお改善が見られない場合に初めて、能力不足を理由とする解雇の相当性が問題となります。指示の伝え方が不十分であったために業務上の支障が生じたにもかかわらず、その責任を従業員に帰することはできません。会社は、指示を具体的かつ明確に行い、重要な事項は書面又は本人が理解できる言語で伝えたことを記録しておく必要があります。

解雇予告と解雇制限

解雇に際しては、少なくとも30日前の予告又は解雇予告手当の支払が必要であり(労働基準法第20条)、業務上の負傷若しくは疾病による療養のための休業期間及びその後30日間、並びに産前産後の休業期間及びその後30日間は解雇することができません(同法第19条)。解雇理由証明書の交付義務(同法第22条)も同様です。

有期労働契約の場合

技能実習生、特定技能外国人及び有期契約で雇用する外国人従業員については、契約期間中の解雇にはやむを得ない事由が必要であり(労働契約法第17条第1項)、この要件は無期契約の解雇よりも厳格です。契約期間の満了時の雇止めについても、更新への合理的な期待がある場合には労働契約法第19条の制限が及びます。技能実習生については、実習実施者の都合により実習を継続できなくなった場合、監理団体及び外国人技能実習機構への届出と、実習先の変更の支援が求められます。

在留資格に関する固有の留意点

在留期間の満了と在留資格の範囲

在留期間が満了し更新が許可されなかった場合、その従業員は日本で就労することができなくなりますので、労働契約は履行不能により終了します。この場合の終了は解雇ではありませんが、在留期間の満了日までに更新の申請が行われ、審査中である場合には、処分がされる時又は満了日から2か月を経過する日のいずれか早い日までは適法に在留し就労を継続することができます(入管法第20条第6項)。会社は、更新の申請と結果を確認し、就労できない状態の従業員を就労させないよう管理する必要があります。また、配置転換により従事する業務が在留資格の範囲から外れる場合には、その配置転換自体を行うことができません。

退職後の在留資格

「技術・人文知識・国際業務」等の就労資格を有する従業員は、退職後も在留期間の満了までは在留資格を失いませんが、在留資格に係る活動を継続して3か月以上行わないでいる場合には、正当な理由がない限り在留資格の取消しの対象となります(入管法第22条の4第1項第6号)。退職した従業員は、14日以内に契約機関に関する届出(同法第19条の16)を行う必要があります。会社は、退職に際して、これらの手続について本人に情報を提供することが望まれます。

会社が行う届出

外国人従業員が離職した場合、会社は、外国人雇用状況の届出(労働施策総合推進法第28条)を行う義務があります。雇用保険の被保険者については資格喪失届に、被保険者でない者については外国人雇用状況届出書により届け出ます。中長期在留者の受入れ機関としての届出(入管法第19条の17)は努力義務です。技能実習及び特定技能の受入れ機関には、それぞれの制度に基づく届出義務があります。

在留資格を理由とする不当な圧力の禁止

「退職しなければ在留資格が取り消されるようにする」「入管に通報する」といった発言により退職を迫ることは、退職の強要として違法であり、それによって得た退職の意思表示は取り消され得ます。在留資格の更新は本人の申請に基づいて出入国在留管理庁が判断するものであり、会社が左右できるものではありません。また、在留資格に関する事実と異なる説明をして退職させることも同様です。

退職勧奨と合意退職の進め方

解雇の要件を満たすか否かにかかわらず、外国人従業員についても、段階を踏んだ指導と記録を経たうえで、労働者の自由な意思を尊重した退職勧奨により合意退職を図ることが、紛争を避ける現実的な方法です。退職勧奨の進め方と限界は日本人従業員の場合と同一ですが、外国人従業員については、次の点に特に留意します。第一に、面談における説明は、本人が理解できる言語又は平易な日本語で行い、必要に応じて通訳を同席させます。第二に、退職の条件(退職日、退職金の上乗せ、有給休暇の処理、離職理由、社会保険の脱退手続、在留資格に関する情報提供等)を書面にし、本人が理解できる言語の訳文を添えます。第三に、退職合意書には、本人が内容を理解したうえで自由な意思により合意した旨を記載し、通訳を用いた場合にはその旨も記載します。第四に、本人が退職しない意思を明確に示した場合には、それ以上の勧奨を行いません。退職勧奨の限界については、関連記事「退職勧奨が違法な退職の強要と評価される分岐点」を御覧ください。

懲戒解雇を検討する場合

横領、重大な経歴詐称、無断欠勤の継続等を理由に懲戒解雇を検討する場合には、就業規則上の根拠と周知、事実関係の証拠による確定、弁明の機会の付与、及び処分の相当性(労働契約法第15条)が必要である点は、日本人従業員と同一です。外国人従業員に特有の事情として、在留資格の申請に際して提出した経歴と実際の経歴が異なることが後に判明する場合があります。この場合、経歴詐称を理由とする懲戒の可否は、詐称された事項が採用の判断に重要な影響を与えたものであったかどうかにより判断されます。また、資格外活動(許可された範囲を超えるアルバイト等)が判明した場合には、本人の在留資格に影響するとともに会社の管理責任も問われますので、事実を確認のうえ、速やかに是正し、必要に応じて専門家に相談してください。

紛争となった場合

外国人従業員が解雇や退職勧奨を争う手続(労働審判、訴訟、労働組合を通じた団体交渉)は、日本人従業員の場合と同一であり、外国人従業員の支援を行う労働組合や団体を通じて申入れがなされることも少なくありません。解雇の有効性の判断において、会社が指導と記録を行っていたか、指示を本人が理解できる形で行っていたか、退職勧奨が適正な態様であったかが問われます。労働審判への対応については、関連記事「労働審判・労働訴訟への対応|申立てを受けた会社が最初にすべきこと」を御覧ください。

弁護士に相談する時期と、費用の考え方

外国人従業員の解雇や退職を巡る問題は、労働法上の判断に在留資格の問題が重なるため、書面による指導に移行する段階、又は退職勧奨を検討する段階で御相談いただくことをお勧めします。当事務所では、使用者側の立場から、対応方針の策定、指導記録及び懲戒処分に関する助言、退職勧奨の面談への同席又は事前の助言、多言語の退職合意書の作成、並びに労働審判、訴訟及び団体交渉への対応を取り扱っています。在留資格に関する手続は、必要に応じて申請取次の資格を有する専門家と連携します。費用は、事案の内容と関与の範囲に応じて事前に御説明します。

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よくあるご質問

外国人従業員の解雇は、日本人より簡単ですか、難しいですか。

同じです。労働契約法第16条をはじめとする解雇の規制は国籍を問わず適用されます。外国人であることを理由に解雇することは労働基準法第3条に反します。

日本語が十分でなく業務に支障があることを理由に解雇できますか。

採用時に求めた水準と職務の内容が明確で、業務に具体的な支障が生じており、会社が指示の工夫や指導、配置の検討を行ってもなお改善が見られない場合に初めて、能力不足を理由とする解雇の相当性が問題となります。指示の伝え方の不備による支障を従業員の責任とすることはできません。

在留期間が切れそうな従業員は、そのまま辞めてもらえばよいですか。

更新が許可されなければ就労できなくなり労働契約は終了しますが、更新申請中は一定期間、適法に就労を継続できます。会社は申請と結果を確認し、就労できない状態で就労させないよう管理する必要があります。在留期間の満了を理由に更新申請を妨げたり退職を迫ったりすることはできません。

「辞めないなら入管に通報する」と言って退職を促してもよいですか。

いけません。在留資格に関する圧力によって退職を迫ることは退職の強要として違法であり、退職の意思表示は取り消され得ます。在留資格の更新の可否は出入国在留管理庁が判断するものであり、会社が左右できるものではありません。

退職した外国人従業員について、会社が行う手続はありますか。

外国人雇用状況の届出(労働施策総合推進法第28条)が義務です。技能実習及び特定技能の受入れ機関には別途の届出義務があります。本人に対しては、契約機関に関する届出(入管法第19条の16)が必要であること、及び3か月以上活動を行わない場合に在留資格の取消しの対象となり得ることを情報提供することが望まれます。

まとめ

外国人従業員の解雇には日本人従業員と同一の法規制が適用され、段階を踏んだ指導と記録、解雇回避の努力、解雇予告等の手続が求められます。固有の留意点は、在留期間及び在留資格の範囲との関係、退職後の在留資格に関する情報提供、外国人雇用状況の届出、並びに言語の相違を踏まえた説明と合意書の作成にあります。在留資格を理由とする圧力による退職の強要や、国籍を理由とする差別的な取扱いは許されません。対応に迷われた場合には、使用者側の労働問題を取り扱う弁護士に御相談ください。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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