残業代請求は、まず請求額の根拠を確認します
残業代の請求を受けた場合、直ちに支払うことも、直ちに全面的に争うことも適切ではありません。まず確認すべきは、請求額がどのような前提で算定されているかです。
請求額は、基礎賃金の額、労働時間の認定、割増率、そして対象期間の4要素で決まります。このいずれかに誤りがあれば、請求額は大きく変動します。
なお、賃金請求権の消滅時効の期間は、令和2年4月1日以降に支払期日が到来する賃金について3年間とされています(当分の間の措置であり、将来的に5年間とされることが予定されています)。対象期間の確認は重要です。
主要な争点
- 管理監督者性 労働基準法第41条第2号の管理監督者に当たるか
- みなし残業代(固定残業代)制度の有効性 明確区分性及び対価性を満たすか
- 労働時間該当性 在社時間の全てが労働時間か、勝手居残りの評価
- 労働時間の立証 タイムカード、入退館記録、パーソナル・コンピュータの起動記録
- 基礎賃金の範囲 除外される手当に当たるか
- 事業場外みなし労働時間制及び裁量労働制の適用の可否
管理監督者性は役職名では決まりません
管理監督者に当たるか否かは、役職の名称ではなく、実質によって判断されます。具体的には、経営に関する決定に参画しているか、労務管理について指揮命令権限を有するか、自己の出退勤について裁量を有するか、地位にふさわしい待遇を受けているかが考慮されます。
課長職又は店長職であるという理由のみで管理監督者として扱い、割増賃金を支払っていない場合には、請求を受ける危険が高い状態にあります。
みなし残業代制度の有効性
みなし残業代制度が有効とされるためには、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とが判別できること(明確区分性)、及び当該部分が時間外労働の対価として支払われるものであることが必要とされています。
また、みなし残業代を導入している場合であっても、想定された時間を超える時間外労働については、別途割増賃金を支払う必要があります。
労働時間の認定
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。在社時間の全てが直ちに労働時間となるわけではありません。
もっとも、使用者が在社を知りながら放置していた場合には、黙示の指示があったものとして労働時間と認定される場合があります。いわゆる勝手居残りについても、業務量との関係で必要性が認められる場合には、労働時間と評価される可能性があります。
反論のためには、業務指示の内容、業務量、退勤を促した記録等を示すことが有効です。
対応の手順
- 第1段階 請求書の内容と算定根拠の確認
- 第2段階 勤怠記録、賃金台帳、就業規則、賃金規程の精査
- 第3段階 管理監督者性及びみなし残業代制度の有効性の検討
- 第4段階 会社側の算定による適正額の試算
- 第5段階 交渉。合意に至れば清算条項を含む合意書を作成します。
- 第6段階 労働審判又は訴訟への対応
再発を防ぐために
個別の請求への対応と並行して、制度上の問題を是正することが重要です。同様の請求が他の従業員から続けて提起される例が少なくないためです。
労働時間管理の方法の見直し、みなし残業代制度の設計の是正、管理監督者の範囲の見直し、就業規則及び賃金規程の整備を検討します。
御相談の申込み
残業代請求への対応については、電話又はお問い合わせフォームより承ります。電話の受付は午前9時から午後9時まで、お問い合わせフォームは24時間受け付けています。
御相談の際は、請求書、就業規則、賃金規程、雇用契約書、賃金台帳、勤怠記録をお持ちください。



















