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外国人従業員を雇用する会社が負う義務は、日本人従業員を雇用する場合の労働法上の義務に加えて、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます。)及び労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(以下「労働施策総合推進法」といいます。)に基づく、在留資格の確認と届出に関する義務が重なります。これらの義務を怠ると、会社自身が不法就労助長罪に問われ、又は技能実習や特定技能の受入れ機関としての適格性を失うことがあります。結論から申し上げますと、外国人従業員の雇用管理の要点は、採用時に在留資格と在留期間を確認して記録すること、雇入れ及び離職の際に届出を行うこと、在留資格の範囲内の業務にのみ従事させること、労働条件を日本人と同一の基準で定め理解できる言語で明示すること、及び在留期間の更新を管理することの5点に集約されます。
本記事では、使用者側の立場から、外国人従業員の雇用管理に関する法律上の義務、技能実習制度及び特定技能制度における受入れ企業の責任、並びに雇用管理の体制づくりについて解説します。なお、国籍を理由として労働条件について差別的な取扱いをすることは労働基準法第3条により禁止されており、外国人従業員の管理は、出身国による性格付けや区別に基づいて行うものではなく、在留資格という法律上の枠組みと、個々の従業員の職務及び勤務の実態に基づいて行うものであることを、あらかじめ申し上げておきます。
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採用時の在留資格の確認
在留カードによる確認
外国人を雇用する際には、在留カード(中長期在留者の場合)又は旅券により、在留資格、在留期間及び就労制限の有無を確認します。在留カードの表面には在留資格と在留期間の満了日が、就労制限の有無の欄には「就労制限なし」「在留資格に基づく就労活動のみ可」「就労不可」等が記載されています。「就労不可」と記載されている場合(留学、家族滞在等)には、裏面の資格外活動許可欄に許可の記載があるか、又は資格外活動許可書の提示を受けて、許可された範囲(原則として週28時間以内)を確認します。確認した内容と在留カードの番号は、雇入れの記録として保存します。在留カードの有効性は、出入国在留管理庁の在留カード等番号失効情報照会により確認することができます。
在留カードを会社が預かってはならないこと
中長期在留者は在留カードを常時携帯する義務を負っており(入管法第23条第2項)、会社が在留カードを預かり保管することは、従業員にこの義務の違反を強いることになるうえ、旅券や在留カードの取上げは、技能実習制度及び特定技能制度において受入れ機関に禁止されている行為でもあります。確認は写しの取得によって行い、原本は本人に返却してください。
在留資格の範囲内の業務であることの確認
就労が認められる在留資格には、それぞれ従事できる活動の範囲が定められています。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を有する者を単純労働に従事させることや、「技能実習」の在留資格を有する者を実習計画にない業務に従事させることは、資格外活動となり、従業員本人だけでなく、それを行わせた会社が不法就労助長罪(入管法第73条の2第1項、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科)に問われます。同条第2項により、在留資格の確認を怠ったことについて過失がある場合には、知らなかったことを理由に処罰を免れることはできません。在留資格の範囲については、関連記事「在留資格「技術・人文知識・国際業務」の範囲と資格外活動」を御覧ください。
雇入れ及び離職の際の届出義務
外国人雇用状況の届出(労働施策総合推進法第28条)
すべての事業主は、外国人(特別永住者及び在留資格「外交」「公用」の者を除きます。)を雇い入れた場合及び離職した場合に、その氏名、在留資格、在留期間等を公共職業安定所長に届け出なければなりません(労働施策総合推進法第28条第1項)。雇用保険の被保険者となる外国人については雇用保険の資格取得届及び喪失届に在留資格等を記載することにより、被保険者とならない外国人については外国人雇用状況届出書により、雇入れの場合は翌月末日まで、離職の場合は翌日から起算して10日以内又は翌月末日までに届け出ます。届出を怠り、又は虚偽の届出をした場合には、30万円以下の罰金の対象となります(同法第40条第1項第2号)。
受入れ機関としての届出(入管法第19条の17)
中長期在留者を受け入れている機関は、その者の受入れの開始及び終了等について出入国在留管理庁長官に届け出るよう努めなければなりません(入管法第19条の17)。技能実習及び特定技能の受入れ機関には、それぞれの制度に基づく別途の届出義務があります。
労働条件の明示と均等待遇
労働条件の明示
労働契約の締結に際して、賃金、労働時間その他の労働条件を書面で明示する義務(労働基準法第15条)は、外国人従業員についても同様に及びます。厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」は、外国人従業員が理解できるよう、母国語その他の当該外国人が使用する言語又は平易な日本語を用いて労働条件を明示することを求めています。労働条件の理解の相違は、外国人従業員との紛争の最も多い原因の一つですので、雇用契約書及び就業規則の要点を、本人が理解できる言語で交付することをお勧めします。
国籍を理由とする差別の禁止
使用者は、労働者の国籍を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について差別的な取扱いをしてはなりません(労働基準法第3条)。最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等も、国籍にかかわらず適用されます。技能実習及び特定技能の制度においては、報酬の額が日本人従業員と同等以上であることが受入れの要件とされています。
社会保険の適用
健康保険、厚生年金保険、雇用保険及び労災保険は、国籍を問わず、加入の要件を満たす従業員に適用されます。外国人であることを理由に加入手続を行わないことは違法です。
技能実習制度及び特定技能制度における受入れ企業の責任
技能実習制度
技能実習制度は、開発途上国等の人材が日本の技能を習得し母国に移転することを目的とする制度であり、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)に基づいて運用されています。企業単独型と団体監理型があり、中小企業の多くは監理団体を通じた団体監理型により受け入れています。実習実施者である企業は、認定を受けた技能実習計画に従って実習を行う義務、技能実習責任者及び技能実習指導員等の配置、実習の状況の帳簿の備付けと報告、並びに技能実習生の保護(暴行、脅迫、監禁、旅券や在留カードの取上げ、私生活の自由の不当な制限等の禁止)の義務を負います。実習計画にない業務への従事、賃金の不払、長時間労働等は、計画の認定の取消し及び受入れ停止の原因となります。なお、令和6年に成立した改正法により、技能実習制度は育成就労制度へ移行することとされており、施行に向けた準備が進められています。受入れ企業においては、制度の移行の時期と経過措置を確認する必要があります。
特定技能制度
特定技能制度は、人手不足が深刻な特定の産業分野において、一定の技能と日本語能力を有する外国人を受け入れる制度です。特定技能1号は在留期間が通算5年を上限とし、特定技能2号は在留期間の更新に上限がなく、家族の帯同も認められます。特定技能2号の対象分野は、制度の開始当初は2分野でしたが、令和5年の閣議決定により大幅に拡大されています。受入れ機関である企業は、特定技能雇用契約の適正な締結(報酬が日本人と同等以上であること等)、支援計画の作成と実施(1号の場合。登録支援機関に委託することができます。)、出入国在留管理庁への各種の届出、及び労働関係法令並びに社会保険関係法令の遵守の義務を負い、これらの基準を満たさない企業は受入れ機関となることができません。過去に労働関係法令の違反や不法就労助長等があった場合には、一定期間、受入れが認められません。
受入れ企業に共通する留意点
いずれの制度においても、受入れ企業は、技能実習生又は特定技能外国人の労働条件、労働時間、安全衛生及び生活の状況について、監理団体、登録支援機関及び出入国在留管理庁に対して説明できる状態にしておく必要があります。出勤簿、賃金台帳、雇用契約書、実習計画又は支援計画、面談の記録等を整備し、いつでも提示できるようにしておくことが、受入れ企業の責任を果たすうえでの基本です。
在留期間の更新の管理
在留期間を過ぎて在留を続けることは不法残留であり、その者を雇用し続けることは不法就労助長罪に当たります。会社は、外国人従業員ごとに在留期間の満了日を一覧にして管理し、満了日の3か月前から可能となる在留期間更新許可申請を本人が適時に行うよう促し、更新の結果を確認して記録を更新します。更新申請中に在留期間が満了した場合には、申請に対する処分がされる時又は満了日から2か月を経過する日のいずれか早い日までは適法に在留することができます(入管法第20条第6項)。転職により職務内容が変わる場合には、在留資格の変更許可申請又は就労資格証明書の交付申請が必要となることがあります。
雇用管理の体制づくり
外国人従業員の受入れに当たっては、次の体制を整えることをお勧めします。第一に、在留資格、在留期間、就労制限の有無、資格外活動許可の有無、届出の実施日を記載した台帳を作成し、人事部門が管理します。第二に、雇用契約書、就業規則の要点、安全衛生に関する注意事項及び緊急時の連絡方法を、本人が理解できる言語又は平易な日本語で交付します。第三に、業務上の指示は、曖昧な表現や婉曲な表現を避け、具体的かつ明確に行い、重要な指示は書面又は電子メールでも伝えます。第四に、配属先の管理職に対して、在留資格の範囲外の業務に従事させてはならないこと、及び国籍を理由とする差別的な取扱いや言動が許されないことを周知します。第五に、相談窓口を設け、労働条件や職場環境に関する申出を受け付けます。これらは、外国人従業員に固有の管理というよりも、労務管理の基本を、言語と制度の相違を踏まえて丁寧に実施することにほかなりません。
弁護士に相談する時期と、費用の考え方
外国人従業員の雇用に関しては、在留資格の該当性の判断、技能実習及び特定技能の受入れに関する契約及び計画の整備、労働条件の設計、並びに問題が生じた場合の対応(資格外活動が判明した場合、在留期間が切れていた場合、退職や解雇を巡る紛争等)について、法的な判断を要する場面が多くあります。当事務所では、使用者側の立場から、外国人従業員の雇用管理に関する助言、雇用契約書及び就業規則の整備、監理団体や登録支援機関との契約の確認、並びに労働紛争への対応を取り扱っています。在留資格に関する申請手続そのものは、必要に応じて申請取次の資格を有する専門家と連携して対応します。費用は、御相談の内容と関与の範囲に応じて事前に御説明します。
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よくあるご質問
在留カードを会社で保管してもよいですか。
いけません。中長期在留者には在留カードの常時携帯義務があり(入管法第23条第2項)、会社が預かることはこの義務の違反を強いることになります。技能実習及び特定技能の制度では、旅券や在留カードの取上げは受入れ機関に禁止された行為です。確認は写しの取得により行い、原本は本人に返却してください。
在留資格を確認せずに雇用し、後に不法就労であることが分かった場合、会社は処罰されますか。
不法就労助長罪(入管法第73条の2)は、在留資格の確認を怠ったことについて過失がある場合には、知らなかったことを理由に処罰を免れることができないと定めています。採用時に在留カードにより在留資格、在留期間及び就労制限の有無を確認し、その記録を残すことが、会社を守る唯一の方法です。
外国人従業員の賃金を日本人より低く設定することはできますか。
できません。国籍を理由とする労働条件の差別的取扱いは労働基準法第3条により禁止されており、最低賃金法も国籍を問わず適用されます。技能実習及び特定技能の制度では、日本人と同等以上の報酬であることが受入れの要件です。
外国人従業員を雇い入れたときや退職したときに、何か届出が必要ですか。
すべての事業主に、雇入れ及び離職の際の外国人雇用状況の届出(労働施策総合推進法第28条)が義務付けられています。雇用保険の被保険者については資格取得届及び喪失届により、被保険者でない者については外国人雇用状況届出書により届け出ます。怠ると罰金の対象となります。
留学生をアルバイトとして雇用する場合の注意点は何ですか。
在留資格「留学」は就労不可であり、資格外活動許可を受けている場合に限り、原則として週28時間以内(教育機関の長期休業期間中は1日8時間以内)で就労することができます。許可の有無と時間の上限を確認し、複数の勤務先がある場合には合計の時間数が上限内であることを本人に確認してください。上限を超えて働かせた場合、会社も不法就労助長罪に問われ得ます。
まとめ
外国人従業員の雇用管理は、採用時の在留資格、在留期間及び就労制限の確認と記録、雇入れ及び離職の際の外国人雇用状況の届出、在留資格の範囲内の業務への従事、日本人と同一の基準による労働条件の設定と理解できる言語での明示、並びに在留期間の更新の管理を柱とし、技能実習及び特定技能の受入れ企業には、それぞれの制度に基づく計画の遵守、届出及び外国人の保護の義務が加わります。在留カードの取上げや国籍を理由とする差別的な取扱いは許されません。受入れの体制の整備や問題が生じた場合の対応については、使用者側の労働問題を取り扱う弁護士に御相談ください。
具体的なご相談をお考えの皆様へ
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