本ページは、労働法及び人事労務管理に関して用いられる用語を1つの頁にまとめたものです。従前、個別の頁として掲載しておりました項目を令和8年9月4日に本ページへ統合し、令和8年9月16日に、投稿として掲載しておりました人事労務用語辞典のうち法律上の意味を有する用語を本ページへ統合しました。各用語の説明は概要にとどまりますので、個別の事案への当てはめについては、使用者側の労働問題を取り扱う弁護士に御相談ください。
一 労働法の基本的な法令と制度
労働基準法
労働条件の最低基準を定める法律です。労働時間、休憩、休日、割増賃金、年次有給休暇、解雇の予告、就業規則等について定め、違反には罰則があります。労働基準法の基準に達しない労働契約の部分は無効となり、同法の基準によります(同法第13条)。
労働契約法
労働契約の成立、変更及び終了に関する民事上のルールを定める法律です。就業規則による労働条件の変更(第9条及び第10条)、懲戒(第15条)、解雇(第16条)、有期労働契約の期間途中の解雇(第17条)、無期転換(第18条)及び雇止め(第19条)の各規定が、使用者側の実務において特に重要です。罰則はありませんが、裁判所の判断の基準となります。
就業規則
労働条件と職場の規律を定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、作成して労働基準監督署に届け出る義務を負います(労働基準法第89条)。作成及び変更に際しては労働者の過半数代表の意見を聴き(同法第90条)、労働者に周知しなければ効力を生じません(同法第106条、労働契約法第7条)。懲戒処分及び懲戒解雇を行うには、就業規則に懲戒の種類と事由の定めがあることが必要です。
労働条件の明示
使用者は、労働契約の締結及び有期労働契約の更新の際に、契約期間、就業の場所と業務の内容とその変更の範囲、労働時間、賃金、退職に関する事項等を、書面等により労働者に明示しなければなりません(労働基準法第15条、同法施行規則第5条)。令和6年4月からは、有期契約の更新上限の有無と内容、及び無期転換申込権が発生する契約の更新時における無期転換に関する事項の明示が追加されました。
36(サブロク)協定
法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超える労働又は法定休日の労働をさせるために、使用者が労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数代表者との間で締結し、労働基準監督署に届け出る労使協定です(労働基準法第36条)。協定の締結と届出がないまま時間外労働をさせることは、同法違反となります。時間外労働には原則として月45時間、年360時間の上限があります。
労働基準監督署
厚生労働省の地方出先機関であり、労働基準法、労働安全衛生法等の遵守状況を監督します。労働者からの申告等を受けて事業場に立ち入る臨検監督を行い、違反があれば是正勧告や指導を行います。是正勧告に従わない場合や違反が重大な場合には、送検されることがあります。
労働安全衛生法
職場における労働者の安全と健康の確保を目的とする法律です。安全衛生管理体制の整備、雇入れ時等の安全衛生教育、健康診断、ストレスチェック、長時間労働者に対する医師の面接指導、及び労働時間の状況の把握(第66条の8の3)等を使用者に義務付けています。
社会保険と労働保険
社会保険は健康保険及び厚生年金保険を、労働保険は労働者災害補償保険(労災保険)及び雇用保険を指します。法人の事業所は原則として社会保険の適用事業所であり、要件を満たす従業員を加入させる義務があります。労災保険は労働者を1人でも使用する事業に適用され、保険料は全額を使用者が負担します。未加入は、M&Aにおいて偶発債務として評価されます。
コンプライアンス
法令及び社内規程の遵守をいいます。労務の分野では、労働時間の把握、割増賃金の支払、就業規則の整備と周知、ハラスメントの防止措置、安全衛生管理等が主な内容であり、違反は労働基準監督署の是正勧告、紛争、企業価値の毀損につながります。
二 雇用の開始と雇用形態
内定
採用の通知により、始業日を始期とし、内定の取消事由を解約権として留保した労働契約が成立したものと解されるのが一般的です。内定の取消しは解雇に当たり、内定当時に知ることができず、知ることが期待できないような事実があり、それを理由として取り消すことが客観的に合理的で社会通念上相当と認められる場合に限って有効とされます。
試用期間
採用後の一定期間、従業員の適性を評価するために設けられる期間です。試用期間中の労働契約は、解約権が留保された労働契約と解され、本採用の拒否は解雇に当たります。通常の解雇よりは広い範囲で認められますが、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。
正社員(無期雇用のフルタイム労働者)
法令上の定義はありませんが、一般に、期間の定めのない労働契約により、所定労働時間をフルタイムで勤務する労働者をいいます。短時間労働者及び有期雇用労働者との待遇の相違については、不合理な待遇差を禁止する規制(パートタイム・有期雇用労働法第8条及び第9条)が適用されます。
契約社員(有期雇用労働者)
期間の定めのある労働契約により雇用される労働者をいいます。1回の契約期間は原則として3年が上限であり(労働基準法第14条第1項)、期間途中の解雇にはやむを得ない事由が必要です(労働契約法第17条第1項)。期間満了による契約の終了(雇止め)には、同法第19条の規制が及びます。
無期転換
同一の使用者との間の有期労働契約の通算契約期間が5年を超える労働者が、期間の定めのない労働契約への転換を申し込んだ場合、使用者はこれを承諾したものとみなされる制度です(労働契約法第18条)。転換後の労働条件は、別段の定めがない限り、期間の定めを除き従前と同一であり、正社員への登用を意味するものではありません。
派遣労働者と直接雇用
派遣労働者は、派遣元事業主と労働契約を締結し、派遣先の指揮命令を受けて就労する労働者です(労働者派遣法)。同一の組織単位における派遣の受入れは原則3年が上限であり、派遣先は、派遣労働者を特定する行為の禁止、派遣先の労働者との均等・均衡待遇への協力等の義務を負います。直接雇用は、就労先の会社自身が労働契約の当事者となる雇用をいいます。
同一労働同一賃金
正社員と短時間労働者及び有期雇用労働者との間で、業務の内容、責任の程度、配置の変更の範囲その他の事情に照らして不合理な待遇の相違を設けることを禁止する規制をいいます(パートタイム・有期雇用労働法第8条及び第9条、労働者派遣法第30条の3及び第30条の4)。基本給、賞与、各種手当、休暇等の待遇ごとに、その性質及び目的に照らして判断されます。
管理監督者
労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい(労働基準法第41条第2号)、労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されないため、時間外労働及び休日労働に対する割増賃金の支払義務がありません(深夜労働の割増賃金は必要です。)。該当するか否かは役職の名称ではなく、経営への関与、労働時間についての裁量、及び地位にふさわしい賃金上の処遇の実態により判断され、いわゆる名ばかり管理職は該当しません。
テレワーク
情報通信技術を利用して、事業場外(自宅、サテライトオフィス等)で業務に従事する勤務形態をいいます。テレワーク中も労働基準法等は適用され、使用者は労働時間を把握する義務を負います。事業場外みなし労働時間制の適用は、情報通信機器が常時通信可能な状態に置かれていない等の要件を満たす場合に限られます。
三 労働時間と賃金
労働時間
労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、労働契約や就業規則の定めにより決まるものではありません。始業前の準備、終業後の片付け、着替え、待機の時間等も、使用者の指示に基づくものであれば労働時間に当たります。使用者は、客観的な方法により労働時間を把握する義務を負います。
割増賃金
法定労働時間を超える時間外労働については2割5分以上(月60時間を超える部分は5割以上)、法定休日の労働については3割5分以上、深夜(午後10時から午前5時まで)の労働については2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法第37条)。基礎となる賃金からは、家族手当、通勤手当、住宅手当等の一定の手当が除外されます。
固定残業代(定額残業代)
一定時間分の割増賃金をあらかじめ定額で支払う制度です。有効と認められるためには、当該手当が時間外労働の対価としての性質を有すること、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とが明確に区別されていること、及び定額分を超える時間外労働があった場合に差額を支払うことが必要です。要件を満たさない場合、支払済みの割増賃金とは認められず、基礎賃金に算入されます。
ノーワーク・ノーペイの原則
労働者が労務を提供しなかった時間については、使用者に賃金の支払義務が生じないという原則です。遅刻、早退、欠勤等の時間に対応する賃金を控除することはこの原則に基づきますが、使用者の責めに帰すべき事由による休業については休業手当(労働基準法第26条)の支払が必要であり、解雇が無効とされた場合には解雇後の賃金全額の支払義務が生じます(民法第536条第2項)。
年次有給休暇
雇入れの日から6か月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対し、勤続年数に応じて年10日から20日の有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法第39条)。年10日以上付与される労働者については、年5日を使用者が時季を指定して取得させる義務があります。退職時に未消化の有給休暇を買い上げる義務はありませんが、退職前の取得の請求を拒むことはできません。
定期昇給とベースアップ
定期昇給は、賃金表に基づき勤続年数や年齢、評価に応じて個々の労働者の賃金が定期的に上がる仕組みをいい、ベースアップは、賃金表そのものを書き換えて全体の賃金水準を引き上げることをいいます。いずれも就業規則や賃金規程の定めに従って実施され、定めがある場合に一方的に停止することは労働条件の不利益変更の問題を生じます。
春闘
毎年春に、労働組合が賃金の引上げ等を要求して使用者と交渉を行う、日本における労使交渉の慣行をいいます。企業内労働組合のない会社には直接の影響はありませんが、賃金水準の相場観として参照されます。
四 人事権の行使
人事異動(配置転換)
職務の内容又は勤務地を変更することをいいます。就業規則に配置転換を命じ得る旨の定めがあり、職種や勤務地を限定する合意がない場合、使用者は配置転換を命じることができますが、業務上の必要性がない場合、不当な動機や目的による場合、又は労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合には、権利の濫用として無効となります。退職に追い込む目的の配置転換は許されません。
出向
労働者が出向元の会社との労働契約を維持したまま、出向先の会社の指揮命令の下で就労することをいいます(在籍出向)。出向を命じるには、就業規則や労働協約に出向に関する定めがあり、出向先での労働条件や出向期間等が整備されていることが必要であり、権利の濫用に当たる出向命令は無効です(労働契約法第14条)。
転籍
労働者が現在の会社との労働契約を終了させ、他の会社と新たに労働契約を締結することをいいます。労働契約の当事者が変わるため、就業規則の定めだけでは足りず、労働者の個別の同意が必要です。M&Aにおける事業譲渡に伴う従業員の移籍も転籍に当たります。
役職定年
一定の年齢に達した従業員を管理職の役職から外す制度をいいます。役職手当の減額を伴うことが多く、就業規則に明確な定めがあり、制度として一律に運用されていることが必要です。役職定年に伴う賃金の減額が大きい場合には、不利益変更の合理性が問題となります。
定年
労働者が一定の年齢に達したことを理由に労働契約が終了する制度です。定年を定める場合は60歳を下回ることができず、65歳までの雇用確保措置(定年の引上げ、継続雇用制度の導入、又は定年の廃止)を講じる義務があります(高年齢者雇用安定法第8条及び第9条)。70歳までの就業確保措置は努力義務です。継続雇用後の労働条件については、同一労働同一賃金の規制が及びます。
五 雇用の終了
解雇
使用者による労働契約の一方的な解約をいいます。普通解雇、懲戒解雇及び整理解雇に分類されます。解雇には、少なくとも30日前の予告又は解雇予告手当の支払(労働基準法第20条)、業務上の傷病による休業期間及び産前産後の休業期間とその後30日間の解雇制限(同法第19条)、並びに解雇権濫用法理(労働契約法第16条)の規制が及びます。
解雇権濫用法理
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、権利を濫用したものとして無効とする法理です。裁判例の蓄積により確立し、現在は労働契約法第16条に明文化されています。解雇の理由の存在だけでなく、注意及び指導の経過、改善の機会の付与、解雇以外の手段の検討、他の労働者との均衡が考慮されます。
普通解雇
勤務成績の不良、勤務態度の不良、能力不足、傷病による就労不能等、労働者側の事情を理由とする解雇のうち、懲戒処分としてではなく行われるものをいいます。就業規則の解雇事由に該当する事実が証拠により認められること、及び解雇権濫用法理の要件を満たすことが必要です。
懲戒解雇
横領、重大な経歴詐称、業務上の重大な非違行為等を理由として、制裁として行う解雇をいいます。就業規則に懲戒解雇の事由と手続の定めがあり周知されていること、該当する事実が証拠により認められること、弁明の機会を与えたこと、及び処分が相当であること(労働契約法第15条)が必要です。退職金の不支給又は減額は、退職金規程にその旨の定めがあり、かつ、それまでの勤続の功を抹消するほどの重大な背信行為がある場合に限って認められます。
整理解雇
経営上の理由により人員を削減するために行う解雇をいいます。人員削減の必要性、解雇回避の努力(配置転換、希望退職の募集等)、人選の合理性、及び手続の相当性(労働者や労働組合への説明と協議)の4つの要素を総合して有効性が判断されます。
退職勧奨
使用者が労働者に対して自発的な退職を促すことをいいます。労働者の自由な意思を尊重して行われる限り違法ではありませんが、労働者が退職しない意思を明確に示した後も長期間にわたり多数回、長時間の面談を繰り返す、退職しなければ解雇すると威迫する等の態様で行われた場合には、違法な退職の強要として損害賠償の対象となり、退職の意思表示が取り消されることがあります。
希望退職の募集
退職金の上乗せ等の優遇条件を提示して、一定期間、退職を希望する労働者を募集することをいいます。整理解雇に先立つ解雇回避の努力の一つとして位置付けられます。募集要項において、対象者、募集期間、優遇の内容、及び会社が承認した者に限って適用される旨を明確に定めておくことが必要です。
雇止め
有期労働契約の期間が満了した際に、契約を更新せずに終了させることをいいます。過去に反復更新され無期契約の解雇と社会通念上同視できる場合、又は労働者が更新を期待することについて合理的な理由がある場合には、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がなければ、従前と同一の条件で契約が更新されたものとみなされます(労働契約法第19条)。3回以上更新した場合又は1年を超えて継続雇用した場合の雇止めには、30日前までの予告が必要です。
自己都合退職と会社都合退職
自己都合退職は労働者の意思による退職を、会社都合退職は解雇、退職勧奨に応じた退職、倒産等の使用者側の事情による退職をいいます。区別は、雇用保険の基本手当の給付制限の有無及び給付日数、並びに退職金規程における支給率に影響します。退職勧奨に応じた退職を自己都合として届け出ることは、離職票の記載を巡る紛争の原因となります。
六 労使紛争と労働組合
個別労働関係紛争
個々の労働者と使用者との間の労働条件その他労働関係に関する紛争をいいます。都道府県労働局のあっせん、労働審判、及び民事訴訟が主な解決手続です。
労働審判
個別労働関係民事紛争について、裁判官である労働審判官1名と労働関係の専門家である労働審判員2名で構成される労働審判委員会が、原則として3回以内の期日で審理し、調停を試み、調停が成立しない場合には審判を行う手続です(労働審判法)。審判に対して2週間以内に異議が申し立てられると、訴訟に移行します。第1回の期日までに主張と証拠を出し尽くす必要があり、会社側の準備期間は3週間から4週間程度です。
労働組合
労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体をいいます(労働組合法第2条)。企業内で組織される企業別労働組合と、企業の枠を超えて個人加入できる合同労働組合とがあります。
合同労働組合(ユニオン)
特定の企業の従業員に限らず、地域や産業を単位として、労働者が個人で加入できる労働組合をいいます。従業員が1人でも加入すれば、会社は当該労働組合からの団体交渉の申入れに応じる義務を負います。解雇や未払賃金等の個別の紛争を契機として加入されることが多く、団体交渉の申入書が突然届く形で会社が認識する例が典型です。
団体交渉
労働組合が使用者と労働条件等について交渉することをいいます。使用者が正当な理由なく団体交渉を拒否すること、及び誠実に交渉しないことは、不当労働行為に当たります(労働組合法第7条第2号)。使用者には合意する義務はありませんが、根拠を示して説明し、資料を提示する等、合意の達成に向けて誠実に交渉する義務があります。
不当労働行為
労働組合法第7条が禁止する使用者の行為であり、労働組合の組合員であることや正当な組合活動を理由とする不利益取扱い、正当な理由のない団体交渉の拒否、労働組合の結成や運営に対する支配介入等をいいます。労働組合は労働委員会に救済を申し立てることができ、労働委員会は救済命令を発します。
都道府県労働委員会と中央労働委員会
労働委員会は、使用者委員、労働者委員及び公益委員の三者で構成される行政委員会であり、不当労働行為の審査及び救済、並びに労働争議のあっせん、調停及び仲裁を行います。都道府県労働委員会の命令に不服がある当事者は、中央労働委員会に再審査を申し立てることができます。
労働争議
労働関係の当事者間において、労働関係に関する主張が一致せず、争議行為(ストライキ等)が発生し、又は発生するおそれがある状態をいいます(労働関係調整法第6条)。正当な争議行為については、労働組合及び組合員は民事上及び刑事上の責任を免れます。
七 ハラスメントと安全衛生
パワーハラスメント
職場において行われる、優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることをいいます(労働施策総合推進法第30条の2第1項)。事業主は、方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応、及びプライバシーの保護等の措置を講じる義務を負い、相談を行ったこと等を理由とする不利益取扱いは禁止されています(同条第2項)。
セクシュアルハラスメント
職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者が労働条件について不利益を受け、又は当該性的な言動により就業環境が害されることをいいます(男女雇用機会均等法第11条)。事業主は、防止のための雇用管理上の措置を講じる義務を負います。
労働災害と労災保険
労働者の業務上又は通勤による負傷、疾病、障害及び死亡を労働災害といい、労働者災害補償保険により療養補償、休業補償等の給付が行われます。労災保険の給付は使用者の民事上の損害賠償責任を完全に免除するものではなく、使用者に安全配慮義務違反がある場合には、給付を超える損害について賠償責任を負います。業務上の傷病による休業期間及びその後30日間は、原則として解雇することができません(労働基準法第19条)。
安全配慮義務
使用者が、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする義務をいいます(労働契約法第5条)。長時間労働による健康障害、ハラスメントによる精神疾患等について、使用者が予見可能性と結果回避可能性を有していながら措置を怠った場合には、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償責任を負います。
産業医と安全衛生委員会
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任し(労働安全衛生法第13条)、安全委員会及び衛生委員会(又は安全衛生委員会)を設置して(同法第17条から第19条まで)、毎月1回以上開催しなければなりません。産業医は、健康診断の結果に基づく措置、長時間労働者の面接指導、職場巡視等を行い、事業者に勧告することができます。

